本年5月25日、「事業性融資の推進等に関する法律」が施行された。 この法律で定義される「事業性融資」とは、従来の不動産担保や個人保証に依存した融資とは異なり、企業の事業価値そのものを担保として資金供給を行う新しい融資モデルである。/
今回の制度の大きな特徴が、新たに創設された「企業価値担保権」である。 これは、従来の動産・不動産・有価証券・債権といった個別資産を担保とするのではなく、企業の総財産を信託会社に信託し、その受益権を金融機関が取得するという、わが国では初めての担保構造を採用している。 担保権者は信託会社であり、金融機関は受益者として担保価値の便益を受ける点が特徴的である。/
事業性融資は複数金融機関との取引を否定するものではないが、企業価値担保権を活用する場合、金融機関は企業の事業状況を継続的にモニタリングする必要がある。 このため、取引金融機関は自ずと少数に絞られ、企業と金融機関の関係はより密接なものとなると考えられる。/
金融庁としては、従来の不動産担保偏重の取引慣行を改め、金融機関の「目利き力」を高めることで、成長分野への資金供給を促すことを企図している。 まさに、金融機関の企業審査能力と事業理解力が問われる制度である。/
また、企業価値担保権の実行は、従来の担保物の換価処分ではなく、事業譲渡等の形態をとる。 したがって、金融機関は買い手企業の探索や、事業再編の提案といった高度なソリューション提供に取り組む必要がある。 これは、金融機関の役割が「資金供給者」から「事業再編の伴走者」へと進化することを意味する。/
この法律の施行が金融機関の進化の契機となるのか。 制度の本格的な成果が現れるには一定の時間を要するものの、事業性融資の新時代が始まったことは間違いない。 企業にとっても金融機関にとっても、事業価値をいかに高め、いかに評価するかが、これからの金融取引の中心的テーマとなるだろう。

